封印歌謡とコラムの花道


 たいへんご無沙汰しています。


 忙しいのにかまけているうち、うっかり2ヶ月以上も放置していました。12月レーティングでは「ストリーム」のストリーミング放送もしてたのにお知らせもせず、このブログの存在をどこからか察知した吉田豪さんから「更新がないですね」と突っ込まれる始末。言い訳していいですか?ホントに忙しかったのです。「ポッドキャスト番長」で2コーナー担当しながら運転免許を取りに行った去年の冬も忙しかったけど今年はそれ以上で、40歳過ぎた頃というのはこんな感じなのでしょうか。それでも、やりたいことがやれているのはまあ幸せなことだと言えるかもしれません。


 たいへん中身が詰まっていた11月、12月のことなどはおいおい書くとして、きょうはお知らせが2つほど。


その1。「封印歌謡」第2弾が放送されます!



 今回もライムスター宇多丸さんとライターで封印歌謡収集家の石橋春海さんが出演。前回放送とほとんどかぶらず15曲ほどかける予定です。先週、収録しましたが
2時間番組なのに2時間半以上も回ってしまい編集に大わらわ。明日の放送なのに全然終わってません(泣)。


 「Aという曲はいいがBという曲はかけるべきでない」という基準は僕の中にもありますし僕以外の放送にたずさわる人たちにもあります。その基準が正当なものであるかどうかは“電波という財産の持ち主である”リスナーに問いかけられるべきではないか・・・?というわけで、今回の番組では「封印歌謡」を聴いてどう感じたか、意見を受け付けるしくみを作りました。放送中にTBSラジオのトップページから番組特設サイトに入ることができますので、「不快だったか有意義だったか」「放送すべきレベルか否か」それぞれの曲について書き込んでいただけると幸いです。


■TBSラジオ特別番組「Taboo Songs2〜蘇る封印歌謡」
 12月27日(木)19時〜21時放送


その2。『コラムの花道』が書籍化されます!


 このコーナー開始当初から書籍化の話は浮かんだり消えたりしていましたが、ついに実現することになりました!2007年に放送された「コラムの花道」から傑作ばかり25本を厳選。来年3月上旬の発売を目指して目下編集作業が進んでいます。この企画がうまく行ったら(=すなわちちゃんと売れたら)来年以降も年鑑っぽく出したいし、「コラムの花道・お蔵出し」などと称して2004〜06年の傑作もまとめてみたいものです。発売日やタイトル、値段などは決まり次第お知らせします。


■『コラムの花道・傑作選2007(仮)』(TBSラジオ編)
 2008年3月上旬 アスペクトから出版予定
 

亀田問題、論評の決定版はコチラ

 15日(月)から聴取率調査週間が始まっています。普段「ストリーム」をポッドキャストでお楽しみの皆さんも今週はAM954で聴いてみて下さいね。


 さて亀田問題。
 この件についてはきのう(15日)の「ニュースさかさめがね」生島淳さんによるスポーツ側からの解説と、
http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2007/10/1015_b578.html


 格闘技にまつわる「いかがわしさ」の面から論じた吉田豪さんの「コラムの花道」
http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2007/10/1015_5a8e.html


 そして「亀田父の無期限ライセンス停止」「亀田大の1年間ライセンス停止」の決定が出てからの生島淳さんによる解説
http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2007/10/1016_0b03.html


 これで現在フォローすべき論点はほぼ出尽くした。内藤大助チャンピオンも「これで騒動はおしまい。これからはボクシングに集中する」と言ってるし、外野のわれわれが感情的になったところで何も得るところはない。あとは「亀田父の子離れ」がちゃんと進むかどうかウオッチするのみだが、子育てに失敗した親などいくらもいるのに亀田家の場合は外からの力でやり直しのチャンスが与えられるのだから本当はずいぶん恵まれた話なのだ。


 それにしても、これまでヨイショしていた番組や出演者がパニックのように手のひらを返していく様は壮観である。ちなみにその中には参院選前、当時の安倍総理を番組に呼んでヨイショしていた人が複数含まれている。今頃になって亀田親子に対して必要以上に怒っている人がいたら要チェックですよ(笑)。むしろ親父なきあとの3兄弟の自立と再チャレンジを支援してみせた方がカッコいいんじゃないか、ファミリーだったんだから。亀田兄弟には、ボクシングそのものの才能はあるようだし。

 
 亀田大のボクシング技術については、試合の翌日「スポーツ報知」に載ったガッツ石松さんの評を僕は頼りにしている。リンクがなかなか出てこないので要点だけ書くと、

 『亀田大のベタ足&ガード戦法はマイク・タイソンが得意としているが、それを有効にするためには左ジャブを出しながら頭を振り、次の攻めにつながる動きが必要。亀田大はそれが出来ておらず、ベタ足パンチは派手なだけでキレがなく流れてしまう。だから当たっても効かない。ただし気力とスタミナは大したもので、キャリアを積めば成長するだろう』


 極めてニュートラルでしょ?ギョーカイ内にしがらみのない人の意見はやはり貴重である。

死刑廃止国リスト

 局に行く途中の電車で「東京新聞」を読む。一面下に「韓国“死刑廃止国”へ〜12月で10年間執行ゼロに」という記事が。死刑制度があっても、10年間執行されなければアムネスティ・インターナショナルが“事実上の死刑廃止国”と認定するのだそうだ。


 それはいいんだけど、記事の横にある解説によると“事実上の死刑廃止国”にはロシアやミャンマーも含まれるのだそうだ。
 政府を批判したジャーナリストを暗殺したり、少数民族を虐殺している国が“死刑廃止国”だと言われてもねえ。

裏スタンバイ

 きょうはパ・リーグクライマックスシリーズ千葉ロッテマリーンズVS福岡ソフトバンクホークス”の中継が予定されており、「ストリーム」は降雨中止に備えて待機である。これを「裏スタンバイ」という。


 中止になった時には通常通りの放送なので、準備も通常通り。朝から雨が降ったりやんだりしているので出演者にも出て来てもらうことにする。番組的にはきょう放送しなければそのままボツになるネタも多いのだが、フレキシブルな編成のためにはいたしかたない。愚痴ではなくホントにそう思う。


 試合は予定通り開始され、午後2時頃まで中止にならないことを確認して「裏スタンバイ」終了。珍しくみんなと外で昼飯を食べ、局に戻って企画書作成。

きょうのオープニング

 小西克哉さんが、政権の顔色をうかがい裏でごちゃごちゃやる文部科学省の検定制度を徹底批判。ポッドキャストに上げたのでぜひお聴き下さい。

http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2007/10/102_6bdf.html

 付け加えることは特にないが、それにしても「保守」を名乗る人たちに歴史から学ぶ態度が希薄なのはどういうことだ。過去の失敗を糧にして未来の安定を図るのが保守主義者だと思うのだが、「名乗ってる」人たちは旧日本軍はひとつも間違ったことをしていないと言いたいみたいだ。無謬性の罠に落ちると安倍内閣相撲協会みたいにのたれ死ぬよ。

きょうの野球中継

 やはりソフトやコンテンツ制作者たるもの、注目の試合があったらフレキシブルに中継を行わなければならない。特に独占的な立場にある局は、面白くなりそうな試合をいち早く見抜いてOAすべきである。


 巨人の優勝決定試合の話ではない。
 米ナショナルリーグのワンゲームプレーオフコロラド・ロッキーズ対サンディエゴ・パドレスの試合である。勝った方がプレーオフに出場できるというまさに一発勝負であって総力戦は必至。予想に違わず延長13回を戦って9対8という熱戦だった。ロッキーズ松井稼頭央も逆転につながる二塁打を放つなど2安打の活躍で、見てたらたいそう面白かったと思うんだがなあ。NHKBSは再放送しないのかなあ。スカパー!ではやってたらしいけど見られないし。


 NHKBSがメジャーリーグを中継せずに再放送した「BS世界のドキュメンタリー」はイギリスで制作された“ミャンマー オーストラリア人記者は見た”。これはこれでたいへんタイムリーで、国内での恐怖政治っぷりがよーくわかる傑作だったので編成の目利きぶりはうかがえるのだが、でも、これは地上波ではできないのかねえ。ついでに言うと、原題は“Burma's Secret War”。現軍事政権の正当性に疑いを持つ国は「ビルマ」と呼んでいる。

テルミン

 学研の「大人の科学17」、今回の特集はテルミンである。「最古の電子楽器」にして「シンセサイザーの原型」テルミン。もちろん付録もテルミン。さっそく組み立ててみた。

 所要時間20分。一般的なドライバー1本で組み立てられるのでカンタンだ。
 床に直接置いて撮った写真なのでサイズがわかりにくいかもしれない。古典的手法によりサイズを示すとこうなる。


 というわけでたいへん小さいものだが、消防車のサイレンみたいな音がちゃんと鳴った。上に伸びたアンテナに手を近づけると音程が下がり、離すと上がる。しかしテルミンはあくまでも楽器であって、アンテナのまわりには「ドレミファ・・・ 」などと音階を示すものはなくあるのは空間だけなのでちゃんと音楽を演奏する場合には熟練を要する。ウィキペディアの「テルミン」の項目には本物のテルミンを演奏している写真がある。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%B3

 この写真の人物が誰あろうテルミンの開発者、レフ・セルゲイヴィッチ・テルミン博士である。「ははー」と言いながら買ったまま放置してあったDVD「テルミン〜An Electoronic Odyssey」を見る。楽器テルミンと博士の数奇な運命を描いたドキュメンタリーである。
 テルミン博士は19世紀末のロシアに生まれた天才的な科学者であり、日本で「イ」の字を写していたのと同じ年*1に、光学式のカラーテレビを開発していたそうだからどれくらい突出した能力の持ち主かがわかる。楽器テルミンのデモンストレーションのためヨーロッパ各国を訪れ、1920年代後半からはニューヨークを拠点に演奏活動と技術開発を行っていたが、第2次世界大戦を前に博士はソ連政府に拉致され消息不明になる。
 東西冷戦が終わり、博士は60数年ぶりにニューヨークを訪れ、アメリカに残した愛弟子にしてテルミン演奏家クララ・ロックモアと感動的な再会を果たす・・・ 。


 亡くなる直前、90歳を超えた博士がクララと再会するところは感動的でうるうるっ、としたのだがこのドキュメンタリーはクララの視点から描かれているため、史実とはだいぶ異なるようだ。そもそも博士ほどの科学者が諜報的な任務をまったく負わずにNYで10年も生活したとは考えにくいし、「拉致」についても博士は後に「自分の意志だ」と語っている。一時スターリン粛正に巻き込まれ収容所に送られたが、その後3度目の結婚をして双子を授かり、1956年には名誉も回復されている。その後、博士の生存が西側の新聞にスクープされたことが原因でモスクワ音楽院での職を解かれたりしているから、政治に翻弄された数奇な運命であることにはまちがいないのだが。


 

テルミン ディレクターズ・エディション [DVD]

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*1:1926年