岩井克人『会社はだれのものか』(平凡社)

 会社はだれのものか
 村上ファンド村上世彰氏の「株式を上場している限りは誰が買ってもいい」「経営者は企業の価値を高めるように行動すべきだ」という主張は「そりゃそうだろうな」と納得するんだけど、「会社は株主のものですよ」と断言されると「え〜、じゃあそこで働いている人や取引先やユーザー(野球ならファンだしラジオならリスナー)はどこに行っちゃうの?」と思ってしまう。そういう僕のような人にはうってつけの本です。
 会社はモノでもあってヒトでもある。「法人」とは「本来モノだけど法律的にはヒトと同じに扱う」という考え方で、お金で計れる価値はモノの部分に宿るが価値を創造するのはヒトである。株主の権利だけを振り回すと企業価値を損なうことになるんですな。
 まあ、「地べたにしか価値を見いださない株主」というのも市場原理によればもちろん「存在をしていい」ので、それに対して経営者は「ヒトの部分にいかに価値が宿っているか」を語らねばならないのだと思いました。僕は経営者じゃないけどさ。