某大手通販会社で話を聞く

 で、その超有名な通販会社社長。日本を代表する急成長企業のトップだが、カリスマというよりは「何でも自分で手を下し、工夫しないと気が済まないアイディア社長」という感じだ。この会社の通販はラジオからスタートし、今では自前のCSチャンネルを持つほどになったのだが、かつて外注していたスタジオでの撮影や録画、編集を自社スタッフで行うよう切り替え、状況の変化に即応できる体制を取ったのだそうだ。例えばテレビの完パケ*1は外注すると1ヶ月くらいかかってしまい、次から次へと新製品が発売される状況に対応できないのだそうだ。そこで自前のスタッフを育成した。一方ラジオはスタッフの喋りだけなので表現を工夫するのはもちろんだが、例えば放送する地域に急に猛暑が訪れたりすると、急きょ売るべき商品を差し替えてエアコンにしたりするのだそうだ。売り上げは3〜4倍違うという。で、こうした「急きょ差し替え」に対応するため、ラジオのスタジオの横には注文を受け付ける受注センターがあるのだ。
 「全部に手をつけないと気が済まない」という社長の体質は僕のプロデューサーのやり方と似ている。躍進企業のトップとたかが1番組のラジオプロデューサーの手法を「似てる」などと言うのは僭越で気が引けるが、シンパシーを持って多くの話を聞くことができたのは確かだ。
 他人に丸投げできない性質の社長は、我が国の丸投げ宰相にも批判的な目を向けているようだ。本当は政治の話もしたかったようだが、隣にいた奥様兼副社長にやんわりと制止されていた。でも「トップダウンのリーダーシップが多くの問題を解決するはず」という考え方は僕は反対です。自分の意見とまるで逆の奴がトップに立っちゃったらどうするんですか。
 社内を見せて貰って、若くて優秀な社員がたくさんいることもわかった。会合には社長の息子(たぶん20代そこそこ)も同席していて、社長が帝王学を授けているところなのかもしれない。今の遺産とスピリットを息子に継がせるのか、あるいは他の社員に委ねるのか、これから慎重に考えていくのだろう。

*1:録画・録音した番組を編集し、そのまま放送できる状態に整えること