CD「クロスオーバー・イレブン」

クロスオーバーイレブン~イット・クッド・ハブン・トゥ・ユー~ クロスオーバー・イレブン~タイム・アフター・タイム~

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 2001年3月に惜しまれつつ終了したNHK−FMの名番組「クロスオーバー・イレブン」の名を冠したコンピである。発売の情報を聞いて即アマゾンで購入。アジムスによるオープニングテーマが流れたとたんに懐かしくて涙が出そうになる。
 コンピレーションCDというよりは番組そのもの、「今日一日のエピローグ。クロスオーバー・イレブン」という津嘉山正種氏のナレーションもちゃんと入っている。選曲者の大伴良則さんの解説にあるように、もともとコンピ的な発想で作られた番組なのだ。
 この番組をよく聴いていたのは中学3年〜浪人生の頃だろうか。親にラジカセを買って貰い、高校受験が終わり自室にそれを持ち込んでも良くなって、ますますラジオ好きに拍車がかかっていった。僕は高校1年まで北海道釧路市という日本の端っこの方に住んでいて、当時は民放FM局*1なんてなかったから、NHK−FMはホントによく聴いた。当時はFM放送から自分の好きな曲をカセットに録音する「エアチェック」が流行していて、お目当ての曲を探すためにFMラジオの番組表と選曲が載ったFM雑誌も隆盛を極めていた。たぶん6誌くらいあったはずで、僕は鈴木英人氏のイラストがオシャレだった「FMステーション」派でした。今思うとこの頃がラジオの全盛期だったんじゃないかなあ。
 そういえばNHK−FMでは平日の夕方放送していた「軽音楽をあなたに」もよく聴いた。テーマ曲はスタッフの同名アルバム(詳細はこちら→asin:B00000747F)に収められている"MY SWEETNESS"(邦題:いとしの貴女)。こちらは洋楽の新譜紹介(アルバムをほぼ1枚まるごとかけていた!)やアーティストの特集をよくやっていて、エアチェックには最適だった。それにしても「軽音楽」も「エアチェック」も、もうすっかり死語だなあ。
 「クロスオーバー」という言葉が持っていた、ジャンルを飛び越えて新しいものが生まれていく新鮮で斬新な感じも、今となってはなかなか伝えがたい。その頃日本の片田舎に住んでいた坊主頭の中学生は、ラジオから聞こえてくる「クロスオーバー・イレブン」の向こうに、行ったことのない東京やよその国、輝かしいものになるはずの未来をぼんやり見ていたような気がする。その自分がラジオ番組を作る側に回るとは・・・。幸せなことなのかもしれない。沈みゆくタイタニックの上で最期まで演奏し続けた楽団員の気持ちというか、このままラジオに一生を捧げてもいいか、とセンチメンタルな気分を呼び起こすCDなのでありました。

*1:最初の民放FM「FM北海道(現:air-G)」が開局するのが1982年9月。最初は札幌と小樽しかカバーしていなかった