強烈な面白さと楽屋オチの間には

 きょうまで聴取率調査週間。自分の担当番組は金曜日で終わっているため、きょうは自宅で片づけなどしながらラジオを聞く。

 TBSラジオ「伊集院光・日曜日の秘密基地」はラジオ周辺で働く人の様々な「技量」に注目したスペシャルだった。女性アナウンサーは様々なトラップが仕掛けられたニュース原稿をつっかえずにいかに早く読むかで対決。ADはあいまいな注文のCDを正しく取ってくる競争。ディレクターはキャッチーな10秒CMの制作に腕をふるい、ドライバーは裏道をうまく使って目的地へ急ぐ・・・ という、「プロの意地」を賭けて勝負する企画である。リスナーはそれぞれの結果を予想し投票する。アナウンサー対決を筆頭にどの対戦も感動的で、ラジオについて知り尽くした伊集院光がリスナーを「聞きどころ」へと上手に誘導、盛り上げるのでついつい引き込まれて4時間聞いてしまった。

 伊集院光の凄いところは(伊集院が凄いなんてことはラジオ関係者なら誰でも知っているが)、句読点を飛ばし息継ぎを減らして時間を稼ぐアナウンサーの技術が必要とされる場面や、アシスタントディレクターが「当たらずといえども遠からず」のCDをスタジオに持って帰ってくる心理についてちゃんと観察しているという点だ。そしてそれを咀嚼して自分の言葉にし、さらにその先を自由自在に演出できる話芸があるから聞いてる側はもうホントにたまらないのである。

 ドキドキしながら聞き終え、ふと思った。「ラジオの仕事に関心がない人」はこの番組をどれくらい楽しめたのかしら?僕が面白いと思ったのは同じフィールドで仕事をしているからか?広い意味ではこの企画は「楽屋オチ」なのではないか?

 自己言及的なエンタテインメントは濃厚な面白さを放ちファンは病みつきになるが、そうでない人にとっては敷居がどんどん上がっていって入れない世界になっていく恐れがある。伊集院光はバランス感覚も(わざとそれを壊すところも含めて)天才だから杞憂だと思うけど。