額に汗して働け

 ホリエモン錬金術はなかなかでかい構図になってきて面白いのだが、このニュースを論じるワイドショーではよく還暦くらいのコメンテーター達が彼を批判して「やっぱり人間は額に汗して働かないといけませんよ」と締めているのを時々見かけたものであった。
 しかしホリエモンは一生懸命、額に汗して、しかも楽しく夢中になって仲間と「錬金術」を考えたのではなかったか?労働の価値と、そのベクトルがどっちを向いているかは分けて考えないといけない問題なのだ。
 しかも斎藤環『家族の痕跡』ISBN:4480842691「労働の価値」すらも自明のものではない。斎藤さんが巨大掲示板で発見し、この本に転載した「謝れ職業人」という詩がたいへん刺さったので少し長いが引用する。
 

謝れ職業人


「ああ、今日も会社に泊まりこみで仕事だよ」

疲れた声で言う
職業人は
謝れ
全ての「だめなヤツ」に
細い声で
謝れ
「ああ、忙しい忙しい」

朝早く出てゆくひと
乗り換えの駅で朝食をかっこみ
後続列車に乗ってゆく
職業人は
謝れ
手をついて
謝れ
「俺はやっとやりがいをみつけた」
なら
謝れ
仕事にきちんと就くことは罪なのだから
それをきちんと謝罪せよ

そう、あなた
今日も働いて働いて
上司に怒鳴られてもがんばって
同僚とのおしゃべりで気晴らして
ときどき仕事でも嬉しい事があるんだよ・・・
それなら
足下を見ろ
そこに横たういくつもの白い腹を見ろ
白いブヨブヨした腹を踏みつけてサーフィンしているあなた
イエイ♪ゴーゴー♪しているあなた
内臓破裂の暖かさに包まれている
あなたは
すべての弱いものに謝罪せよ
あなたの強さを謝罪せよ

仕事

 仕事

  仕事

取引

 連絡

  申し送り

あなたがそうやって一生懸命生きる事で壊してきた
そしてそうやって一生懸命働くことで壊している
すべてのダメなもの弱いものアホなもの
恥ずかしいもの腐ったもの古くなったもの

謝罪せよ

 あなたが彼らの年金を払ってやることに対して
 謝れ
 あなたが彼らの医療費をまかなうことに
 謝れ
 あなたが彼らを保護しいたわり慰めることに
 謝れ

3月15日くもり
自分がたまたま頑丈であり
毎朝おはようと笑って出かける
そのことに
ごめんな
さい


 そう、僕は好きで働いているのである。そして僕が好きで一生懸命やった結果、面白からぬ思いをしたり不幸になったりする人がいることをどこかで念頭に置いておかないといけない。現に苦情も来てるわけだし。