読んだ本『MLBが付けた日本人選手の値段』(鈴村裕輔・講談社+α新書)

 MLBが付けた日本人選手の値段 (講談社プラスアルファ新書)
 メジャーリーグの球団が日本国内でプレーする日本人選手をどのように見ているかは、日本のスポーツ紙を読んでいても客観的な記事にはなかなかお目にかかれない。この本はメジャーリーグが日本人選手の特色をどのように評価し、どこに魅力を見いだしているかが書かれており参考になる。第6章は有名日本人選手のスカウティングリポート風の評価と値付けが載っている。値付けとはすなわち、どこに需要があるかということだ。
 メジャーリーグは、打者については「動きが機敏でバットの扱いが上手」「守備にそつがなく安定感があること」。投手については「狙ったところに球を投げられる」「大リーグでは通常目にしない変化球」を求めるのだそうだ。そして性格面では「個人成績よりもチームの勝利を優先し、献身的にプレーすること」が求められる。イチローはもちろん、日本ではスラッガーだった松井秀喜も、田口も井口もすべてこのタイプである。
 野手の場合、ポジションによって異なる打撃能力も要求される。今年、城島が挑戦する捕手の場合、守備も打撃も一流なのはヤンキースのポサダやタイガースのI.ロドリゲスなどごく一握りで、後は「めちゃめちゃ打つが守備は高校生並」(マイク・ピアッツァ=元メッツ)か「捕球術は素晴らしいがバット扱いが下手」(B.オーツマス=アストロズ)みたいな選手がほとんどで、言葉の壁をうまく超えさえすれば活躍が期待できるという見立てだ。
 野手では外野手と二塁手は、日本人選手が使えるということがすでに証明されている。一方、ノーサンキューなのは一塁手三塁手で、この2つのポジションに要求されるのは圧倒的な長打力なのだそうだ。このジャンルに関しては日本人選手は今のところ全く期待されておらず、当分その気配もない。中村紀洋が開幕1ヶ月でマイナーリーグに落とされ、そのままお呼びがかからなかった理由(p.37〜39)にはたいへん説得力があった。