14日のお仕事〜ミスリードのごまかし方

 毎日同じようなことばかり書いていてイヤになるのだが、トリノ五輪の事前報道はホントにひどい。実際にはそうでもないのに「メダル有力」と煽っておいて、メダルが取れなければ「まさかの惨敗」と書くのである。そしてワイドショーのコメンテーターが「やっぱり日本人は精神力が・・・」などと結論づけるに至っては開いた口がふさがらない。オマエがやってみろよ。選手だって迷惑だろう。
 スポーツ観戦とは凡人には到達できない「一瞬の輝き」をお相伴させていただく行為なのだ。他人の輝きを感知できない人は、自分の人生を光らせることもできないに違いない。ちょっとくさいか。しかし最近、真剣にそう思うよ。
 だいたい、事前報道でメディアがやっていることは「贔屓の引き倒し」ですらない。ひいきでも何でもなくて、単に時間を埋める“ネタ”として扱っているだけなんだもの。だったら思い入れたっぷりすぎのスポーツドキュメントやあざといストップモーションばかりの高校野球ダイジェストの方が100倍マシだ。
 
 夕方、ニュースを見ていたらまたまたやっていた。今夜行われるフィギュアスケート男子ショートプログラムについて、「ニッポン期待の高橋大輔はステップでは世界のトップクラスで・・・」「魅せる演技でメダルを狙います・・・」と。高橋選手の特長はステップの美しさにあることは間違いないが、このアナウンスは「ジャンプでは飛び抜けた力がない」という事実から目をそらした“翼賛”報道なのだ。
 スポーツ紙も高橋選手の「フリーでは4回転に挑戦します」という発言を大きく伝えていたが、男子のトップ選手では4回転ジャンプはもはや当たり前なのである。なぜ同じ記事の中にそれを書かない?
 高橋選手は国際スケート連盟(ISU)のランキングでは13位だ。ちなみに織田信成くんは10位。http://www.isufs.org/ws/wsmen1.htm 世界13位の選手が表彰台に登ればたいへんな快挙だが、客観的に見ればこれは「番狂わせ」というのである。採点競技で実績のない選手が上位にあがるのは至難の業だ。
 例えば「ジャンプがあまり得意でない」というシビアな情報を視聴者があらかじめ知っていたら何か不都合が起きるのか?視聴者は「ステップでどう挽回するんだろう」「4回転ジャンプをプログラムに入れこんで、一発狙ってきたな」と新たな楽しみ方を見つけられるはずである。
 それをそうせず翼賛一色、というのは視聴者をバカにしているというよりは、制作側のレベルが低下しているような気も。で、レベルの低い奴らが「ま、こんなもんでしょ」と視聴者をナメて作るからますますひどいことに・・・ 。ラジオで同じ現象が起きてないわけではないけどさ。