父と娘

 きのうは顔を出した方がいい飲み会があったのだが、ちょっと考えた末自宅に帰った。娘が飼い始めたやごのエサを買いに行かねばならんのだ。
 小学校のプールには、秋、トンボが卵を産み付ける。翌年になって今頃、プールの中にはたくさんのやごが暮らすようになる。しかし、彼らがトンボになるまでプールの使用を待っていては夏が終わってしまうので、3〜4年生の児童を動員してやご捕りをし、教室や児童の家で飼う、ということをやっているのだ。
 で、娘はきのうやごを6匹持ち帰ってきた。空腹になると共食いを始めるそうで(教室にいるやつはやったそうだ)、彼女は気が気じゃない。市内のJマートにペットコーナーがあって、イトミミズを売っているそうで、娘といっしょにタクシーで向かった。クルマがないと、こういう時に不便である。
 閉店20分前に到着、急いでイトミミズ(生)とアカムシ(冷凍)をゲット。帰りがけにファミレスに寄り、彼女は好物の包み焼きハンバーグを嬉しそうに食べた。こっちはビール。こういう瞬間は本当に貴重だ。

 家に帰ってからニュースを見る。佐世保で小6の女の子が同級生をカッターナイフで殺害した。被害者の父親が記者会見で答えている。「今朝、洗濯機に向かっている時に背後をバタバタと通っていった。『忘れものはないか?』と聞くと、『ない』と答えた。振り返らなかったので、後ろ姿も見ていないんですよ」。
 明日も続くはずだった日常が突然、それも最悪な形で終わってしまう辛さ。娘をいかにかわいがっていたか、その成長をどれだけ楽しみにしていたか、自分もそうだから想像するに余りある。こういうことが少しでも減らせるように、ラジオという媒体でどんなことができるだろうか?

 翌朝(2日)、いつものFMを聴いているとMr.Childrenの「タガタメ」がかかった。もちろん、事件を受けた意図的な選曲であり、こういう状況で聴くと涙が出そうになる(この曲は去年、長崎で起きた小6が5歳の男児を殺害した事件がきっかけで作られたのだそうだ)。しみこむような想像力を喚起させること、「もし自分がその立場に置かれたら」と考えること、これが映像のないラジオができることなのではないか?