テルミン

 学研の「大人の科学17」、今回の特集はテルミンである。「最古の電子楽器」にして「シンセサイザーの原型」テルミン。もちろん付録もテルミン。さっそく組み立ててみた。

 所要時間20分。一般的なドライバー1本で組み立てられるのでカンタンだ。
 床に直接置いて撮った写真なのでサイズがわかりにくいかもしれない。古典的手法によりサイズを示すとこうなる。


 というわけでたいへん小さいものだが、消防車のサイレンみたいな音がちゃんと鳴った。上に伸びたアンテナに手を近づけると音程が下がり、離すと上がる。しかしテルミンはあくまでも楽器であって、アンテナのまわりには「ドレミファ・・・ 」などと音階を示すものはなくあるのは空間だけなのでちゃんと音楽を演奏する場合には熟練を要する。ウィキペディアの「テルミン」の項目には本物のテルミンを演奏している写真がある。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%B3

 この写真の人物が誰あろうテルミンの開発者、レフ・セルゲイヴィッチ・テルミン博士である。「ははー」と言いながら買ったまま放置してあったDVD「テルミン〜An Electoronic Odyssey」を見る。楽器テルミンと博士の数奇な運命を描いたドキュメンタリーである。
 テルミン博士は19世紀末のロシアに生まれた天才的な科学者であり、日本で「イ」の字を写していたのと同じ年*1に、光学式のカラーテレビを開発していたそうだからどれくらい突出した能力の持ち主かがわかる。楽器テルミンのデモンストレーションのためヨーロッパ各国を訪れ、1920年代後半からはニューヨークを拠点に演奏活動と技術開発を行っていたが、第2次世界大戦を前に博士はソ連政府に拉致され消息不明になる。
 東西冷戦が終わり、博士は60数年ぶりにニューヨークを訪れ、アメリカに残した愛弟子にしてテルミン演奏家クララ・ロックモアと感動的な再会を果たす・・・ 。


 亡くなる直前、90歳を超えた博士がクララと再会するところは感動的でうるうるっ、としたのだがこのドキュメンタリーはクララの視点から描かれているため、史実とはだいぶ異なるようだ。そもそも博士ほどの科学者が諜報的な任務をまったく負わずにNYで10年も生活したとは考えにくいし、「拉致」についても博士は後に「自分の意志だ」と語っている。一時スターリン粛正に巻き込まれ収容所に送られたが、その後3度目の結婚をして双子を授かり、1956年には名誉も回復されている。その後、博士の生存が西側の新聞にスクープされたことが原因でモスクワ音楽院での職を解かれたりしているから、政治に翻弄された数奇な運命であることにはまちがいないのだが。


 

テルミン ディレクターズ・エディション [DVD]

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*1:1926年